第一章 ある寒い国の二匹の仔ぐま
第一章 ある寒い国の二匹の仔ぐま
ある、とっても寒い国のとっても寒い地方に、くまの仔の「みち」と「ぬり」という二匹の仔ぐまがいました。
二匹は生まれてすぐに、おやぐまと生き別れになってしまい、この一年を歯を食いしばって必死に生きてきました。
二匹はふたごのくまなので、見かけはそっくりでしたが、性格はちがっています。
兄ぐまの「みち」は、やんちゃで、ちょっと乱暴者、なまきずが絶えないのですが、じつは意外とのんびりやさんです。
弟ぐまの「ぬり」は、賢いけれど運動は苦手。「九十九」までなら計算だってできます。でも「九十九」を超える数は、いくつであっても(たとえひとつ多い百であっても)、「ぬり」にとっては「たくさん」なのでした。でも二匹の仔ぐまにとっては「九十九」までの数ですべてのことが十分でした。
二匹だけで生きたこの一年は、「ぬり」が、「どこに行ったらえさになりそうなものがあるだろう」「どこに行ったら危ない目にあわないですむだろう」といったことを考えて、「みち」が、その「ぬり」の考えにしたがって、じっさいにえさをとってきたり、隠れ家をつくったり……、ときっちりと役割分担をしていました。
たとえばこんなぐあいです。
「みちさん(ぬりは兄ぐまのことをこう呼んでいました)、あっちのほうに蜂さんが飛んでいる。きっと『はちみち(はちみつのことです)』が近くにあるはずだ」
「どれどれ。うん。たしかに飛んでいるね。近くに巣があるのかなぁ?」
「うん。あの飛び方からするとたぶん一〇時の方角に巣があるかもしれないね」
「よし、みちが行ってみるよ」
しばらくすると、みちは巣を見つけて、ぬりに報告しました。
「ぬり、やっぱり一〇時の方角にあったよ。いっしょに行こう」
二匹は揃って歩いていきました。すると、だんだんと飛んでいる蜂の数が増えていきました。そして、その先の大きな木のうろに、大きな蜂の巣がありました。
「ほら、ここだよ、ぬり」
「うん、みちさん」
「ぬり、ちょっと巣をのぞいてごらん。何匹くらいいる?」
「うーんとね、一、二、三……」
ぬりは九十九匹まで数えました。そしてみちに言いました。
「みちさん、たくさんいる!」
気のやさしい二匹の仔ぐまは、蜂さんに、
「ねえ、はちさん、一生懸命働いてはちみちを集めているところを申し訳ないんだけど、ぼくたちおなかぺこぺこなんだ。ほんの少しでいいからはちみちを分けてくれないかなぁ」
と聞きました。
ふだんから、この二匹の仔ぐまが一生懸命に生きているのを見て知っていた一匹の蜂が言いました。
「うん。お前たちは気のやさしい仔ぐまだから、いいだろう。ちょっと女王さまに聞いてくるから、待っていなさい」
そういうと、巣の奥のほうに向かって飛んでいきました。ほどなく、手に蜜のたっぷりついた木切れを持ってその蜂さんが戻ってきました。
すると、そのうしろからも一匹、二匹と、やはり手にたっぷりはちみつのついた木切れを持った蜂さんがついてくるではありませんか。
「女王さまに報告したら、『その仔ぐまたちはよい仔だから、ぜひ蜜を分けておあげなさい』とおっしゃっておられた。ということで、これをお前たちにあげよう」
最初の蜂がそう言うと、二匹の仔ぐまの前につぎつぎと蜜のたっぷりついた木切れがつまれていきました。
「いやぁ、これはすごいや。ありがとう」
「みちさん、ほんとうにすごいね。一こ、二こ、三こ……、九十九こ、……、うーんと、たくさんのはちみちだ!」
二匹の仔ぐまはこうやって森の虫や動物たちと仲良くなって、助け合って生きていました。
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コメント
こんな童話を待っていました。仔ぐまのきょうだいが仲良くてほほえましいです。たくさんのはちみつをもらえて、良かったね。お話の続きが楽しみです。
投稿: ファンになりました | 2007年4月18日 (水) 01時04分